『月記』

小瀬村卓実の備忘録。キャリア論と経営論を残します。

ポテンシャル転職の虚像

今回は、ポテンシャル転職の実態について考えていきたいと思います。

 

よく20代の転職は「ポテンシャルを見てもらえる」と言いますが、

エージェント事業を運営する身としては、

実際はそうなっていないことの方が多いと捉えています。

 

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なぜポテンシャル転職は実現しないのか?

転職エージェントに話を聞きにいって、

「結局今と似たような仕事しかないのか」

「結局よく聞く案件しか紹介されないのか」

と感じる若手の方も多いのではないでしょうか?

 

では、20代のポテンシャル転職はなぜ実現しないのか。

その状況踏まえ、人材業界そして転職者の方は、

どう対応していくべきなのかについて考えた内容を残します。

 

ポテンシャル転職が実現しない最大の理由は、

人材業界、特にエージェント事業におけるビジネスモデルにあります。

 

転職エージェントの売上は、

転職を支援した方の年収に紐付いて決定する仕組みになっており、

シニアに比べて若手はどうしても単価が安くなるという傾向にあります。

 

その中で、企業として収益を構築するために、

20代の転職者は一人当たりに工数をかけるのではなく、

グロスでガサっと転職を支援するのが最適解になりやすい。

 

そのためには、

「20代の転職者の経験やスキルがそのまま活きる求人案件」

つまり即戦力採用という形での転職支援となります。

 

選考対策に工数をかけずに内定をとってもらうには、

受かりやすい案件である必要があるからです。

 

勘が良い方は既にお気づきかもしれませんが、

経験やスキルがそのまま活きる転職を進めることで、

20代の転職者から見ると、

「その方の数少ない経験の中で転職先を選ばなければならない」

と言うことになります。

 

本来ポテンシャルで幅広い可能性の中で見られるべき20代の転職者が、

経験豊富なシニアよりも応募できる案件の幅が狭いような提案を受ける理由はここにあります。

 

この実態を踏まえ、どう動くべきか?

20代の転職者を支援する場合においては、

今の経験やスキルでは次の仕事の30%程度しかフォローできないが、

その方の人間的な魅力やベース能力、これからのキャッチアップの方針を語ることで

70%の不足があっても、今後の成長を想定して採用してもらう、

そのための支援を行うと言うのがエージェントに求められる役割だと考えています。

 

転職者の方から見れば本当に自分がやりたい仕事は何なのかと言う整理を行った上で、

エージェントに希望を伝え、目指すキャリアプランと選考対策を一緒に進めていくという心がけが重要です。

 

人材会社の経営者として見れば、

業界全体として必要な仕組みは、20代の若手転職者の場合、

・即戦力転職

・ポテンシャル転職

・不可能な転職

の整理を明確にすることだと考えています。

 

もちろん今やっている仕事が自分に合っていて、

そのスキルや経験をそのまま生かせるような仕事を続けていきたいと言う方であれば、

当然即戦力転職で問題ありませんし、実際にそういう方も多くいらっしゃいます。

 

一方で、その方のやりたいことがキャリアチェンジやポテンシャルの要素を含むのであれば、

企業側の採用事情も含め、ポテンシャルを見せれば十分転職を実現できるのか、

または可能性のある範囲でのキャリアプランを再構築すべきなのかという見極めが重要になります。

 

今後弊社でも、若手における転職の構造的な問題を解決すべく、

テクノロジーと「人」によるサービスの両軸で取り組んでいければと思います。

 

本日は以上です。