『月記』

小瀬村卓実の備忘録。キャリア論と経営論を残します。

覚悟決めのススメ

今回は、転職における一大要素である「覚悟決め」についてご紹介します。

 

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弊社では、成功する転職の要素として、

「価値観に合う仕事に」

「覚悟を決めて」

入ることを挙げている。今回は、この覚悟決めの大切さと、どのようにすれば決められるのかということを考えていきたい。将来も見据えて良い意思決定をするために、決断で悩んでいる人はもちろん、転職を考え始めたばかりの人にも、ご一読頂けると幸いである。

 

覚悟決めの大切さとは?

転職をご支援する際に、弊社として転職者に必ず申し上げるのが、

「少なくとも3年はいる」

という気概を持って決めて欲しい。ということである。

 

通常は、エージェントがこのようなお願いをすることは少ない。転職のハードルを上げることになりかねないため、転職が起きないとフィーが発生しない人材紹介業としてはデメリットになる場合も多いからである。

 

一方で、この覚悟決めが転職者にもたらすメリットは非常に大きく、だからこそ伝えていく必要もあると感じている。今回は、まずその重要さについて説明していきたい。

 

第一に、実務的に通用する能力を身につけられる、ということがあげられる。

以前の記事で述べた通り、20代での転職はできれば1回、多くて2回ということを考えると、短期での再転職は避けたいところである。経歴として綺麗に見えるという面も事実ではあるが、長い目で見た時に本当に必要になってくるものはむしろ実力面である。

 

キャリアでは、30歳前後で自分の今後働いていく領域がどこなのかという決断を迫られる。それに向けて、20代では自分が本当にやりたい領域を特定し、そこで活躍していくための経験と実力を積み重ねていくことが重要になる。30歳の段階では、ポテンシャル採用というわけにはいかず、ある程度の素地が求められるのだ。

 

そこで今回ご紹介したいのが、「1万時間の法則」というものだ。この法則は弊社の基本的な考えの一つであり、

「何事も1万時間行うことで、ある程度のレベルまでは必ず到達できる」

というものである。

 

1万時間というと、フルタイムで働いて34年程度。物事を継続し、様々な役割や経験をする中で、そのコツや自分のスタイルを掴んでいくことが備わってくるのだ。

 

是非一度、自分の中で今まで1万時間取り組んだものが何か、またその領域についてどのくらい自信を持って人に話せるかを考えて頂きたい。2年未満でやめてしまったことに比べ、明確に定着した能力や知識があるのではないだろうか。

 

この仕事をしていると、転職活動とは何ですか?と聞かれることがちらほらあるのだが、20代の転職に限って言えば、「次の1万時間を何に割くかを決めること」と回答できる。

 

3年~4年というと、なかなかに長く感じる。しかし、続けていくことで、継続力だけでなく、将来に向けた確かな実力を培っていって頂ければ嬉しい限りである。

 

第二に、覚悟を決めることで本当にやりたいことが見えやすくなる、ということである。

転職後は、環境も変わるため、少なからず困難に直面することになる。まずは前向きに今の仕事に取り組んでいく、という姿勢を持つことで、

「自分は何が本当にやりたいのか?」

という問いへの答えを少しずつ理解していくことができる。

 

本気でやることによって、はじめて、自分のやりたいことは見えてくるように思う。

30歳では、今後30年以上働いていく領域を決めていくことになる。

 

20代での転職では、やりたいことが明確になっていることは少なく、転職先がベストだという確信を持つことは極めて難しい。実際にやってみないことには、仕事の楽しさや企業の雰囲気も含め、どうしてもわからないところもある。

 

こういった転職活動は、ピンポイントでやりたいことなのかどうかと考えると、どうしてもわからないところが存在し、結果なんとなくの現状維持に流れやすい。こうなると、キャリアを作っていくことは難しく、我慢する力や「まあ、いいか」と自分を納得させる力ばかりが高まっていく傾向にある。

 

むしろ、覚悟決めは、これから自分の本当にやりたいことを見つけていくためにするということを理解し、

「今回の転職は自分のやりたい方向に近づいていけるのか」

という観点を確認し、明確な意思を固めて頂ければ幸いである。

決してこの転職で最後にする必要性はなく、アプローチショットになっているかどうかで考えて頂きたい。

 

その判断ができるのであれば、転職するという場合はもちろん、現職に留まるという結論だとしても、大きな一歩になるように思う。

 

覚悟はどう決めるのか

では、覚悟はどのように決めていくべきか、ということについても考えていきたい。大きなポイントとして、

・期限を切ること

・次のキャリアも見据えること

2つがあげられる。

 

1つ目の、期限を切ることは、意思決定において最も重要である。キャリアというのは非常に抽象的で、どうしても考えるのが後回しになりやすい。ただしこの後回しという行為は、キャリアを考えることから逃げているだけである、ということを意識しなければならない。

 

現職にとどまり続けても、転職して職場を変えても、30歳前後には大きな意思決定が訪れる。ある意味、無意識のうちに意思決定が終わっているということになりかねないのだ。

 

転職活動にて内定を貰った場合は、おそらく自分のことや各転職案件について、ある程度の理解は進んでいることになると思う。今までの活動で考えたことを基礎として、最後の意思決定に向けて「考えきる」ことは間延びさせないほうがよい。

 

いついつまでには決める、と期限を決めたうえで、この土日はキャリアに向き合う等、意図的にキャリアを考える時間をまとまって取ることをオススメしたい。

 

考えた結果が現職に留まる、転職になるかのどちらになるかは問題ではない。転職活動をきっかけに、現職の業務ではなく、自分のキャリアについて時間を割いてあげることは、非常に有益であると思う。

 

2つ目の、次のキャリアを見据えることは、覚悟決めには必須の要素であると考えている。20代での転職はその企業にずっといるという前提ではないことを踏まえ、その先を見据えて納得できるかは非常に重要な観点である。

 

この点に関しては、今回の転職をした向こう側に、どのようなキャリアが考えられるのかを信頼できるエージェントと話し合って欲しい。

 

内定をもらい、転職の直前になると、ついつい転職先企業の欠点探しに向かってしまう傾向がある。特に事業会社への転職では、今後の選択肢が極端に絞られると感じることが多いようだ。

しかし、実際にはコンサルや広告代理店といった支援側の会社でも、事業側の会社でも、はたまた現職に残ったとしても、選択肢は絞られていくこととなる。

 

例えばブランドとしては有名な外資のコンサルに行ったとしても、ITチームであれば、次の転職で戦略チームに行くことは難しいし、その逆もまた然りである。同じマーケターでも、消費財マーケといった取扱対象やWebマーケといった手法など、様々な切り口があり、移れる先には制限がある。

 

今回の転職先できちんと活躍した先に、どのような職種やどのような企業への転職が考えられるかを伝えておくことはエージェントとしての責務だと感じている。

 

転職は「点」として捉えるのではなく、今後のキャリアを見据えた視点で、「線」として考えていくべきであり、そのための転職市場の状況やキャリアの拡がり等については、是非エージェントを活用して欲しい。

 

余談ではあるが、世界一の呼び声も高いサッカー選手の代理人であるジョルジュ・メンデスの言葉で、

「君の仕事をやれ、それ以外の仕事は全て僕に任せてくれ」

というものがあるが、私はこのセリフが非常に好きである。

 

実際に仕事をし、キャリアの意思決定をするのは転職者本人であるが、キャリアの情報を自分ごとと捉え、一緒に考えていけるエージェントと出会い、良い転職をして頂ければ幸いだ。

 

今回は以上です。