『月記』

小瀬村卓実の備忘録。キャリア論と経営論を残します。

事業選定を哲学したい

こんにちは、アサインで代表している小瀬村です。

今回は、私が意識している事業選定軸について残したいと思います。

 

先日こちらの記事で、起業時の事業選定については触れましたが、

事業運営の経験を重ねた結果、どのような考え方に行き着いたかを書いていきます。

 

tkosemura.hatenablog.com

 

 

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事業選定で7割は決まる

初めて起業した時とは異なり、

事業の起こし方も、成長のさせ方もイメージが湧いている状況では、

いかに筋の良い事業を選ぶのかは非常に大切だ。

 

経営において、どのような事業やるのか、という問いの重要性は、全体の7割ほどを占めるように感じる。

 

もちろん事業選定の筋が非常に良かった場合でも、運営の仕方が間違っていれば、企業としての成長は見込めない。

 

つまり運営は3割だからと言って、事業選定の7割だけで勝てるわけではなく、

両方が成立してこそ、初めて機能するのだが、

最初の段階で7割もが決まることの重要性は見過ごせない。

 

現在の事業選定軸は?

当然日々アップデートされていくべきだが、今意識している事業選定の軸は以下の5つである。

 

・新しい市場であること

・市場規模が十分であること

・顧客便益の差分が大きいこと

・実現へのインフラが整っていること

・競合のサービスが不十分であること

 

この5つを満たすことが事業選びの基準となっており、

各観点での評価/状況を念頭に置いた上で、運営も行っていくことになる。

 

なかなかイメージがわかないと思うので、それぞれを簡単に説明していく。

 

「新しい市場であること」は、

その市場の中で大きなシェアを取るチャンスを高められる。

今からスマートフォンの市場に入っていくのは、特許やリソースの差から新規参入者にはかなり分が悪い。

一方で、AI等を活用した新しいサービスは、既存の大企業も試行錯誤しており、

場合によっては既存事業とのカニバリズムにより大企業の追随を遅らせられる可能性もある。

 

「市場規模が十分であること」は、

市場の中でどれだけの顧客が自分たちのサービスを気にいってくれるか、という考えに基づく「シェア」をとったときのリターンを明確にしてくれる。

市場の50%をとっても10億円市場では売り上げは5億円にしかならない。

 

「顧客便益の差分が大きいこと」は、

現代において代替するサービスが存在しない、完全なる新市場はほとんどない。

アマゾンの書籍ECであれば、既存の本屋での購入に比べ、新しいサービスがどれだけ顧客に価値をもたらすのかと言う定性的な価値判断は重要視している。

 

「実現へのインフラが整っていること」は、

今の状況でどれだけ実現性を持てるのか、と言う妥当な判断が求められる。

宇宙産業では、小型の衛星を飛ばすだけで数億円単位でお金がかかってしまいインフラが整っているとは言えない。

一方でインターネットサービスであれば、大学生が2人でも起業することができる。

 

競合のサービスが不十分である事は、

いくら新しい市場を扱っても1番目のプレイヤーになることが少ない。

既存のサービスよりもより良い価値が提供できるアイディアがあるかどうかが重要である。

すでに十分な顧客価値を提供できている場合は、参入しても顧客は誰も喜ばない。

FacebookでもAmazonでもその領域での1番最初のプレイヤーではなかった。

 

このような考え方に基づき、事業アイディアをいくつも出した上で、取り組むべき事業の大枠を決めるようにしている。

 

本当の意味で理解することは容易でない

たったの5つで、意外とシンプルだな。

と考える方もいるかもしれないが、実際に正しく実践するには、かなり深い理解が求められる。

 

以前の記事で触れたように、こういった経営に関する考えは、自分の経験とともに腹落ちさせ、

自分なりの理解や哲学を作っていくことが大切だと実感している。

 

理解の難しさについて、具体例を挙げてご紹介したい。

 

例えば、市場規模の大きさについて、

我々が手掛ける若手ハイクラス向けエージェント事業の市場規模はいくらであろうか。

 

人材紹介の市場規模は全体で3000億円と言われる。

 

この数字感を聞くと、十分な大きさがあるように感じるし、他の市場に比べても、実際に大きい部類になる。

 

ただ、この中で本当のターゲット市場はいくらになるのか、という精査が重要である。

 

20代の若手が転職市場に占める割合は金額換算でおおよそ50%

 

若手を主な顧客もしているリクルートの転職実績は、

MARCH以上が10パーセント

日東駒専10パーセント

日東駒専より下位の大学卒が80パーセント

といった割合になっている。

 

そして、若手MARCH以上の転職において人材紹介はエージェント業だけではない。

求人メディアが50%

エージェント業が40%

その他(求人DB等)が10%

といったところだろうか。

 

これらを踏まえると、

若手市場は全体の半分で1500億円

その中のMARCH以上は10%150億円

エージェント業は更にその40%60億円

 

とフルポテンシャルで60億円であることがわかる。

つまり、市場の10%を獲得したとしても売り上げは6億円でとどまるのだ。

 

自分のやろうとしている事業を、現実に向き合い、厳しくも強い気持ちで評価する事は簡単では無い。

 

いくつも事業アイデアを出した上で、その中で最も良いと思われるものを捉える必要がある。

 

もちろん、完全な事業選定の軸を作る事は難しいし、

これは私もまだ理解できていないが、「一勝九敗」は真実なのであろう。

 

少しでも事業選定の理解を深めながら、

自分の事業の成功を信じ、より良い顧客価値を作れるようになっていきたい。

 

本日は以上です。